結論はやっぱりイタリアのHAMが言った「空芯コイルに替えるべき」でした。
中国製エアバンド 受信機キットの歴史ですが、フィルタのコイルの件にも関係するので、機会あれば調べて紹介したいと思います。ここで手身近に言うと、元々米国の雑誌掲載回路がキット化された。それが流れて中国メーカがコピーし、キット販売で人気出た。更に中国メーカの中でもコピーされ、今生き残っているバージョンは初段の帯域フィルタがプリント基板の渦巻きパターンになっています。 #3種類のフィルタ部写真
初段フィルタの違い
初期のバージョンでは初段フィルタは空芯コイル、可変コンデンサ でした。次には空芯コイルと固定コンデンサ に替わり、今は基板のプリントパターンのコイルになっています。はじめ買ったのが空芯コイルと固定コンデンサ で、調整なしでも通過特性測ったらなかなか良い特性でした。 #nanoVNAで測った空芯コイルタイプの通過特性
空芯コイルフィルタの帯域特性
もう一台作ろうと思い買ったのが、プリント基板の渦巻きパターンのものでした。組み立てて調整しようとして、何だが感度が悪いのに気が付きました。そして、初段フィルタの通過特性を調べたら、全く使い物になりません。この方式では調整代がありません。このバージョンが出た当座、どこかのFORUMで帯域がずれてると話題になっていたようだという噂を聞きました。 #PCBコイルの通過特性オリジナル
PCBパターンコイルの初段フィルタの帯域特性
それで、得意の試行錯誤で何とかならないかとコンデンサ の値を変えたりいました。更にコンデンサ を渦巻きパターンの上に寝かせるというアクロバット をやってみて帯域内のあばれが少し緩和されました。でも通過損失が多いので、もともと感度が悪いのにこれではちょっと使いもにならないとジャンク箱に入ってました。 #PCBコイル、修正後の通過特性改良
コンデンサ 倒しで帯域特性を改善?
最近思い出し、何とかならないかと調べることにします。nanoVNAでPCBパターンコイルのインダクタンスを測ろうとすると、小さい方のループは60nHと言う値ですが、大きい方はキャパシタ ンスになり、100MHz付近に自己共振点があります。そこでやっと気が付きました。誘電率 が3以上もある基板の上でパターンをぐるぐる10cm近く這いまわすとストレー容量が効いて単なるインダクターではなく、LC回路になっていたんですね。それで、コンデンサ 倒しではストレー容量変動で自己共振周波数が移動し帯域位置に変動があったのだと推定します。
100MHzぐらいならパターンコイルは集中常数回路だと思っていたのは大間違い、誘電率 3で、ぐるぐるパタンはそれだけでLC回路になってました。
AIさんにどうですかと聞いてみました。 誘電体損失(FR4のtanδ≈0.02) → 高周波で寄生容量を通じて並列コンダクタンスとなり、等価直列抵抗(Rs)を増加させる。 表皮効果による導体損失 → 130MHzで銅の表皮深さは約5.7µm。パターン厚が18µmでも実効抵抗は直流より増加。 寄生容量の過大 → ターン間容量および基板グランド面との容量がSRFを低下させ、使用帯域でインダクタ特性を損なう。 磁気結合による渦電流損失 → グランド面が近い場合、磁束が導体に渦電流を誘起し、損失を増加させる。 これらの要因が複合的に作用し、小さいインダクタではQ≪1、大きいインダクタではSRF(自己共振周波数)が使用帯域内に落ちるという結果を招きました。
と言うことで、PCBパターンコイルはインダクタでなくQの低い共振回路、それも使う周波数より低い自己共振点を持っていたので、使いものにならないという見立てです。
「渦巻きストリップライン」は、
1.分布定数線路の位相特性(長さが波長に対して無視できない場合) 2.隣接セグメント間の電磁気結合(MとCm) 3.基板の誘電体・導体損失 の3つを同時に考慮しないと正確に解析できない「結合分布定数回路」です。
このため、単純な「インダクタ」として扱うには限界があり、高周波では期待したQやSRFが得られない
ずいぶん遠回りをしましたが、中国製エアバンド 受信機キットとしては、パターンぶった切って、空芯コイルにしないと使い物にならないという事です。空芯コイルへの入れ替え作業とその結果については別途報告することにします。
デジタル化した中華エアバンド 受信機キットの操作面